航図なき国際社会の“新フロンティア”-日本の国際貢献
5.こころの領域が新産業の創造を育む
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自らの生涯の科学的業績に拘ることなく、真理的な探求に凡てを投げ打って没入することが、先ず重要な関門であることは確かな事実であります。先ずそれを前提として、我々の眼前に広がる極めて現実的な事象を観察して、そこに形成される事象の再現を想定してみます。そして再現をするに必要な諸元と、科学的体系によるその形成が融合可能な詳細までを確認した意志として、形態の詳細まで「表象」されたとき、始めて物として再現される可能性を持ちます。
そしてこの再現こそは、事象のもつ問題点を詳細まで物語るものとなっており、有効な対策を決定するものになります。
そのときに必要とする情報量の大きさと、これを処理する巨大かつ精緻なシステムの大きさは、恐らくは10の数十万乘に相当する、いわゆる天文学的な大きさになるものと思われます。
人間がコンピューターなどの機械的な機能を援用させつつ肉体的な頭脳を活用していっても、この膨大な情報量を合目的的に活用するために、系を制御することを可能とすることは、科学的思考を規制する節減の法則とも呼ばれ、科学の目標は「最小の思考の出費で事実をできるだけ完全に記述すること」と定式化されている「思考経済」(参考資料)的な十分な配慮を要するものであります。
しかも客観的な科学ばかりではなく、主観的な領域を含む理解を拡大する行程こそ、実は我々人間の使命とも言えるだろう宇宙への調和への道であることは、ほぼ確実なものと考えなければなりません。
「科学の考え方を転換することで現代科学の進展に貢献したい」とインタビューに応えておられる東北大学 野家 啓一氏(参考資料)は「少なくとも、主観的な働きを全く排除した完全な客観主義では今後の科学を理解することは難しいと思います。さらに一歩進めて、科学には、科学者の想像力によって自然についての「物語」を語るという性格もあるのではないか、そんな見方で科学を捉えられないだろうかと思っている。これは「科学のナラトロジー」というテーマで「科学の解釈学」と共に私自身が現在温めているテーマの一つです。このように科学に対する考え方を変えることで、近代科学の行き詰まりを打破できないか、現代社会の新たな価値観の創造や進展に貢献できないかと考えている。(1994年4月『Guideline』哲学の劇場)という記述を読むことからも主観的な人間の思考が客観的な科学領域に参入して始めて本質的な創造がうまれ、我々の住む環境もその存在にも正しく論究をすることができます。そのときこそ、今まで国際社会にあった覇権主義的な働きによる正義なき実態からも、脱出できる可能性を持つようになるように思います。
この様に適正な進化を継続しようとする地球人類の次なる世代の科学技術は、概説して言えば先ず専門分化を続けるばかりではなく、これに伴った専門深化が進み、思考経済的には勿論、スタートアップする現代の先進的な研究者には極めて深刻で困難な課題を提起することになると思われます。
それは一人の肉体頭脳では事足りず、多くの科学者の協働によって合目的的な活動が必須になる可能性があるからであります。言わば科学者という個性豊かなものたちに協働という社会的ジレンマを超えた大いなる努力が要求されるようになるからであります。
そこには我々が経済や軍事の分野において歴史的な長さで行ってきた覇権主義的な活動を自律してこれを超克し、新フロンティアである主観的な科学分野を組み込んだ客観的科学を、切り込みの現段階から人類の存亡を賭けた社会的ジレンマ超克という明確な目標のもとに、時間との戦いに勝ち残るべく、いま難局に対面していることを知らねばならないと思います。
新興国や中進国に素材産業や工業製品の大半をコスト政策のもとに徐々に転移していった先進諸国の依って立つ新しい基盤は、この専門深化のすえに生まれてくる、人間の使命を果たすための科学思想をもとに、自らの意志を明らかにして地域が意志決定を行うに値する自己組織化を進める背景の整備に向かう有用な技術的手段の整備に向かうものと思われます。
人間が生きるための、衣食住や医療福祉に関する製造の科学技術によって得られた余暇時間を惑星地球の波動の向上に向かう人間の役割を果たす時間の作成のための技術に転換してゆくものと思われます。そして人間の意志がものの形態を決定づける原子核や陽子のもつ因果関係とその役割を知り、自己組織化した地域政府の定める政策が人間の使命や役割を果たすため、どの様な意識段階の人材の向上に貢献するかが評価される科学技術によって、新産業の基盤が整備されるのであります。
その様な意識段階の人材によって新しく構築された物的な産業は、多彩なロボットの支援を受けて物的な製造に当たり、人間は一日2~3時間を生きるための時間に費やし、その他の凡ての時間は、多様に進化する人間社会の形成に貢献し、動植物の進化を含めて多様な認識の人の意識段階の向上に献身する様になるのであります。
凡ての生物の意識段階の向上は、人間という認識間通訳の活躍によって集団的な社会まで展開し、新しい社会的ニーズは、意識に見合う物的環境を訴求するようになるでしょう。先進諸国はこの様な意識領域の世界に新しいフロンティアを見いだしつつ開拓し、対立の創造から融合の創造へと究極する愛の発露を継続できるような技術開発の先駆者として、増加し続ける世界人口を集団的に意識改革する役割をもっているものと思います。